ルドゥの理想都市
サリーヌ・ロワイヤルの航空写真
クロード・ニコラ・ルドゥ
Claude Nicolas Ledoux.1736~1806
フランスの王室建築家として、大規模な公共建築を数多く手がけた。二巻からなる著書「芸術と道徳および法治の観点より見た建築」(1804~1846)で知られ、現代都市概念の基礎をつくった。
フランス東部のフランシュ・コンテ地方、プザンソン近郊アルケスナンにある世界文化遺産。啓蒙時代の18世紀、クロード・ニコラ・ルドゥの設計により王立製塩工場として1779年に竣工した大建築。ルドゥはこれをさらに空想的に発展させ、自然環境の中に独創的な都市施設を集積した理想都市構想を展開した。
1927年、これをドゥ県が購入して修復に乗り出し、72年にクロード・ニコラ・ルドゥ財団を設けて本格的な文化施設として整備した。94年に同名の研究所が組織され、今ではEU(欧州連合)の文化交流センターになっている。
王冠型の建築を中心として円形に外観が配置された空間は未完のまま半円の状態で残ったため、「幻視の理想都市」といわれている。
「人間が人間の尊厳をもって生きられる場所」として都市の概念をはじめて作ったことで、1983年にユネスコの世界遺産に指定され、「世界の都市の教科書」、「理想都市の中心的存在」と位置づけられている。
夏期にはヨーロッパ連合各国より選抜された若手天才音楽家によるコンサート ジユパントゥス、ツール・ド・フランス、国際バルーンフェスティバルなどのイべントが開催されることでも有名。
現在サリーヌ・ロワイヤルは、フランス国家の文化・環境・建築・観光・教育・科学部門、国立近代美術館ポンピドー・センター、国立科学産業館ラ・ビレット、ヨーロッパ連合と提携し、未来の理想都市づくりのシンクタンクとして機能している。開催されたシンポジウム、イベントはプラスティックカー・ショー、国際建築デザイン学会、EU建築空間学会、プラスティック素材会議、国際気象学会議、地中海学会、日仏サミットなど。
館内の常設展示としては、監督官の家の地下ケーヴに、この製塩工場の記憶を保存しているかのような「塩の博物館(Le lieu du sel)」が設置されている。もうひとつは世界で唯一個人の建築家を対象とする常設ギャラリーとしての「ルドゥ博物館(Musee Ledoux)」だ。ここは91年に整備され、ルドゥがかつて「芸術・習俗・法制から考察された建築」において計画した、いわゆる幻視の建築模型約60個の展示、ドローイング、そしてAVなどが充実した空間を形づくる。この2つの小規模博物館は通年で見ることが可能だ。